ひどりみ

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【凍てつく星空】

「わあ……」
 感嘆に吐き出した息が白く広がっていく。それが消えないうちに、私は君の手をきゅうと握った。きれいだね。とっても。声を出さずとも、同じリズムで吐き出される白い息と、互いに握り返す手と手が代わりに会話をしている。
 夜空を包む薄い雲がちょうどここだけ無くて、澄んだ黒と切り立つ光が美しいコントラストを描いている。いつしか作った手製のプラネタリウムのような景色が、薄氷の奥にあるみたいだ。
「すごい。」
「……こっちに出てきて、よかったね」
「うん。」
 やがて吐き出す息すら冷えて、雪のように消えた。私たちは手を繋いだまま雪原に身を横たえる。先程までそうしていたように。冷えきった手にはもうぬくもりが無くて、感覚も凍りつき始めている。
「最期にあなたとこんな綺麗な景色がみれて、うれしい」
「こんどは来世で、一緒に見れるかなあ」
 そういうと、君は「そういうとこ、案外ロマンチストだよね」と笑った。本気なんだけどな、と少しむくれながら、その女の子らしい笑顔にキュンとしてしまう。
「あったかいね」
「うん、あったかい」
 凍てつく星空。凍てつく私たち。凍てつく世界。そこにあるのは、愛のあたたかさだけだった。

12/2/2025, 7:18:39 AM