涙が嫌いでたまらなかった。
泣きたくもないのに勝手に目からボロボロと溢れて、それでいて「泣けば許されると思ってるのか?」とか「弱いふりしてたら構ってもらえて良いね」だとか好き勝手言われるんだから。
だから、泣くのは嫌いでたまらなかった。
それなのに君が何でもないことのように「死のうと思う」なんて言うから。
悲しくも無いのに勝手に目から涙が溢れてとまらない。
「死にたいならそうすればいいよ」
情けないほど震える声でそう言った。ああ、こんな汚い顔で言いたくなかった。今の君みたいにさらっと言いたかったのに。
だんだん涙だけじゃなくて鼻水も出てきて、スンスンと鼻を吸っても口元に垂れてきたから服の袖でぐいっと拭った。
赤く充血した目で君を見た。
君は困ったような、それでいてうっすらと微笑んでるようなよく分からない顔をしていた。
「別に悲しくはないからね、これは勝手に出てくるだけだから。私の意志じゃないから!」
そう言うと君は「うん」とびっくりするぐらい優しい声で頷いた。
それを見たらまたボロボロと涙が出てきて、ズビズビと鼻をすすりながら嗚咽をもらしながらより一層激しく泣いた。
それを見て君は「泣いてくれてありがとう」って優しく笑った。
ああ、本当に涙が嫌いでたまらない。
涙で君が思いとどまってくれたら良かったのに。
私の涙は本当になんの役にもたたない。
誰よりも優しい君は、一度だって涙を見せたことは無かったのに君が話をするたびに私は目を腫らしていた。
大変なこと、辛いこと、悲しいこと、寂しいこと、その全部を君はさも当たり前みたいに話すものだから。
悲しくなんかないのに勝手に涙が出てしまう。
君はもう辛い思いをすることはないのに。
君はもう心を殺す必要はないのに。
ああ、嬉しいのに、喜ばなくちゃいけないのに、こんなにも涙が止まらない。
3/30/2025, 6:27:44 AM