光合成

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『秘密の場所』

雪の積もった朝。僕は君の隣で目を覚ました。
床の硬さと壁の狭さに身体は悲鳴をあげていて、ぼやけた視界にバンドルが見えたことから車の中だと認識する。
フロントガラスから入ってくる眩い朝日に目を細ませながら鈍い頭を回転させる。

あぁ、そうだ。
昨日の深夜、大雪の降るなか彼女と車でここまで来たんだ。
海に面した大きな公園。
それは僕と彼女が初めて出会った思い出の場所だった。山道を抜けた先に大きく広がる水平線が僕らのお気に入りで秘密の場所だった。
あの時は確か真っ赤なバラが咲いていて、とても綺麗で、僕はそこで彼女に告白をした。

彼女はすやすやと寝息を立てていて起きる気配がない。そっと車から降りるとひんやりと冷たい空気が鼻をツンとさせる。
水平線から昇る朝日が綺麗だった。
眩しくて頭がクラクラした。
だから、昨日のことが嘘のように思えた。

トランクを空け、荷物が揃っているか確認する。
レジャーシート、たくさんのタオル、ロープとスコップ、ガムテープ、そして最後に練炭。
その中からガムテープと練炭だけを取り出し車に戻る。

そう、昨日、僕らは人を殺した。
そして、この公園の近くに埋めた。
山道を通るため隠す場所などいくらでもある。

世界に大きな嘘をついた僕らに、居場所はもうない。
さぁ、二度寝をしよう。
大丈夫、次に目が覚めたときはきっと、僕と君の
2人だけの世界だ。

おやすみ。僕と君だけの秘密の場所で。


2025.03.08
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3/8/2025, 12:39:38 PM