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※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン

知っていますか?
空の青色は、残り物の色だそうですよ。同じように海の色は、その残り物を水が拾って映した色なんだそうです。
石炭と炎の色で出来ているセキタンザンには少しばかり遠い話かもしれませんね。
残り物と言うと少し言い方が悪いかもしれません。この世界は、太陽の日差しを浴びてたくさんの明かりを貰っています。日光を直接見ると……目にはよくないのでサングラスをしましょうね。
サングラスがあれば直射日光から眼を守ることができます。……もちろん人間じゃないきみだって例外じゃありません。
ええと、話が逸れてしまいましたが、
天気の良い日に青空の下で直接見るとほぼ白色に見えるかと思います。
……見えてますよね? ああよかった。基本的にはやはり人の眼もきみたちセキタンザンの眼も同じ機能をしているのでしょうか。
まあ、たとえ他の色をしていても構いません。今度は雨上がりの空を思い出してください。虹が掛かった所を見たことがあるでしょう? 6色のカラフルなアーチ状のもののことです。完全な弧を描くことは稀で、山裾辺りから伸びている姿を見ることが多いでしょうか。
そうそう、カントーやホウエンのひとたちは虹色を7色だと言うそうですよ。
少しばかり悔しいですが……ガラルに住むぼくたちよりも色に対する感性が鋭いのでしょうか。ぼくもカブさんから聞いて初めて驚きました。……ええとつまりですね、ぼくたち人間の間でも何を重視するか、あとはその人個人の見え方でいくらでも変わるので、ぼくときみが見えるものが違っていてもなにもおかしくないと……伝えたかったのです。
それで虹の話です。白い光は雨の水などで屈折した時、本来の色を見せます。6色ありますが、それぞれの色には一つずつ、実はぼくたち人間の目には見えない波長がありまして、赤が1番長く、反対の青色が1番短いのだそうです。
夕焼けが赤色なのは横から地平線に伸びる太陽の赤色が1番長く届きやすいからだそうです。そうしてひとつずつぼくらが受け取る長さにはズレが生じて……最終的には残り物の青が残ってしまうそうなのです。

ぼくにとって空の色は、白色……あるいは薄紫色でした。
薄曇りや雪が降る前の雲の色ばかりを見ていたからですね。セキタンザン、きみも知っての通り、寒冷地であり……すぐ近くに海辺もあるぼくらのキルクスの町は雪やあられが降りやすく、天気の良い日は少ないです。今朝見た天気予報では、また1週間近くあられが続くようです。
雪でなくて……何よりでした。雪掻きもよい訓練にはなりますが、もっときちんと組んだメニューをジムトレーナーの方々と行いたいですし、ポケモンたちもいるとはいえ人手が必要で、ほぼ総出になってしまうのは頂けません。
……でも本当は昔からそうだったのです。実はぼく、恥ずかしながら家に……実家にいた頃は雪掻きをしたことがほとんどありませんでした。後を継ぐためにこおりポケモンの勉強か、訓練かのどちらかで……時間を割いている余裕がなかったのです。
本当は空の色なんてどうでも良いとさえ……こおりポケモンこそ天候に左右されるはずなのに。
あられがバラバラ落ちる中、ぼくらはいつも深くて暗い海に向かいました。母はぼくと母のラプラスが仲良くなれるようにしたかったのです。
学ぶことも、トレーニングも、ラプラスといることも苦ではありませんでした。
ひとつひとつがぼくの力になるのだから、こんなに良いことはありません。
でもそこで見る海の青さは、全て……残り物でした。前に進めない愚鈍なぼくという波長が残った色。ぼくの……目の色。

でもきみといるようになって、一つ気が付いたことがあります。その空の色は……きみの煙の色に少しだけ似ていました。高い湿度が生み出す雲と、きみの水蒸気……場所は違えど大本は同じです。ぼくはあの空を……あまり見たくありませんでした。
しかしきみの煙はじっと見ていてとても楽しい。もくもくとあがる噴煙は、一瞬たりとも同じ色になることはありません。水分量や火力の量、それが指し示すきみの体調で毎日毎秒色が変わっていきます。
きみがしっかりとほのおを作ってあげる煙は白に近い……そう、あの雲が覆う空にとても似ていることに気が付きました。
けれど、それだけではありません。キルクスの上空に広がる雲の中にも分厚い部分や薄い部分、その入り混じりがあって、いろんな色を作っていました。
あいまいな空は……たくさんの色彩に満ち溢れているのです。これはきみがみせてくれる輝きのひとつにすぎません。
こんな雑学に興味が向いたのも……きみと見る空の色がとてもカラフルに出来ていたからです。

例えばきみといつもトレーニングに行くヨロイ島。あそこは本当に素敵なところです。
日照りはきみのほのおに活力を、砂嵐の時はきみのいわのちからがきみを守ってくれます。
曇天の時は、きみの煙そっくりの雲が覆いますし、雨の時は足元が悪くなりますが、それもバランスを養う訓練です。ぼくも咄嗟の時にバク宙を行うデモンストレーションが出来ました。
霧の時は……サングラスがどうにもなりませんので、さすがにトレーニングは中止です。何かあった時が大変……危険は避けるべきですからね。
晴れた日は汗だくになりますが、より効率的に身体を追い詰められる。筋力は使って細胞を千切らなければつきませんからね。
なにより一緒に見るあの空と海……残り物なんて言わせない、輝くような青色がどこまでも広がります。ぼくはこの色を、これからきっと一生忘れることはありません。
ぼくは明日もまた、あの蒼色を見に行くでしょう。キルクスの雲が無数の色だったように、海の青も一色じゃない。明後日も、また違う色が放つ輝きを見たいと思っています。残り物だってかまいません。
いえ、残り物のぼくにはぼくの色があるのでしょう。
きみの煙の彩りがあれば、6色も7色も超えた、無限の色を見ることが出来るはずだから。


6/15/2023, 5:52:40 AM