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「ごめんね。」
あなたの泣く声が聞こえて頭を守られる感覚があった。違う、違うよ、そんな言葉が聞きたいんじゃない。どうして? どうして私を置いていくの。待って、お願い。一人にしないで。
「だって君を私の勝手な死に巻き込めない。それに君のこと好きだから生きて欲しいと思った。ありがとう。
一緒に逝ってくれるって言ってくれた時嬉しかった。
だから、君の未来を生きて。」
何で? 私はあなたに恩を返したいの。一人で寂しかった私を救ってくれたんだから。だから、家に居場所が
ないと打ち明けて死にたいと言ったとき今度は私があなたを一人にしないと話して今屋上から飛び降りようと
していたのに。嫌だよ。あなたのいない世界なんて。
そう思いながら顔を上げたときあなたの笑顔が見えた。
そして、グチャッ、と頭の潰れる音がして血が飛び散る。私は守られていたから少し頭を打つだけで済んだ。
騒ぎを聞きつけた人が救急車を呼ぶ声がする。
「ごめんね。」
あの声が私を絶望に叩き落とす。だって私はあなたの願いを断れないから。私はあなたがいればいいのに。
どうして謝るの。涙が頬を伝う。血で見えないあなたの顔を撫でながら意識を失った。

『ごめんね』

5/29/2023, 11:44:21 AM