ガルシア

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 緑のアイコンに赤の丸、その中に「1」の表示。すっかり見慣れた画面だ。
 いくつものトークを遡って、ようやく辿り着いた彼の名前の右側に「1」。日付は数ヶ月前。スタンプが送信されているというだけの通知。そのスタンプひとつを見る勇気すら私にはなかった。
 彼が最後に送ったメッセージはそのただひとつのスタンプだった。それを送った直後に崖から飛び降りたらしく、数日後に変わり果てた姿で発見されたと告げられたのが私。見ない方がいいと言われ、彼の姿は見ていない。遺書すらなかったが、綺麗に揃えられた靴や傍にそっと置かれた鞄から自殺だろうと判断された。最後まで几帳面だったのが彼らしい。
 何のスタンプが送られているかも知らない。たまたま、メッセージでやり取りするのが億劫な時期に入っていたせいだ。一度もアプリを開くこともないうちに彼が身を投げたことを知ったのだ。それからずっと、既読もつけていない。心のどこかで、数ヶ月も既読をつけない私を心配するメッセージが送られてくるのを待っている。


『開けないLINE』

9/1/2023, 2:56:52 PM