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「行かないでと、願ったのに」

 「俺、行こうと思うんだ。」
 覚悟の決まった顔で、あなたは私に言った。彼が行こうとしている場所は遠く、無事に帰って来られるかも分からない。
 「嫌だ。行かないで。お願い、そばにいて。」
 何度伝えても、あなたの気持ちが変わることはなかった。私だって分かっている。きっとこれが最善の方法なのだろうと。
 でも、私はあなたの傍にいられるのなら、死ぬことだって怖くはない。
 それでも私の声は、願いはあなたに届かない。
 「じゃあ。元気で、幸せになれよ。」
 去っていく広い背中を、引き止めたいのに声が出ない。

 ただあなたと2人で穏やかに暮らしたい。
 そんな私の願いは叶うことなく、泡となって消えていった。

11/3/2025, 9:30:27 PM