るに

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車とぶつかりそうになって
死にかけた今日、
直後は怖かった。
死を恐れた。
でも段々、
死なせてくれよなんて思ってきた。
みんな見えない翼を持ってる。
大きさは違うけど
ちゃんと飛べてる。
気づかないだけで
ちゃんと羽ばたいてる。
私はどうか。
大きさは普通だけど使えない。
自分のものじゃないみたいな感じ。
翼って
夢中になれて
自分を高めることができるものがある
証明になるんだと思う。
だから私は
夢中にはなれるけど
高めれないものなんだ。
する事する事全部が
他と変わらないというか、
そこから何も広げられないというか。
そんな自分を嫌ったり、
人と比べたり。
勝手に生まれてくる思考は
泣きたくなるほど惨めで。
だから今日は
翼を気にしないように過ごしていたんだ。
レンガの道の右側を歩いて、
チェック柄の傘で落ち葉を受け止めて、
少し冬っぽさを感じてくる空気を
肺いっぱいに吸って。
そんなちょっとの間に
曲がり角から車は来ていて、
あと数cm前に行っていたら
吹っ飛んでいたかもしれないほど
車はスピードが出ていた。
今日くらいは
お気に入りの服を着て
幸せに過ごそうと思っていたのに。
ドクドクと早くなる鼓動に合わせて
早歩きで家に帰る。
布団の上では愛犬が寝ていて、
いびきをかいていた。
背中をそっと触ると
暖かくて
ポロポロと涙がこぼれ落ちてきた。
それから夜まで
ずーっと愛犬の隣にいたんだ。
"Good Midnight!"
飛べない翼はただの飾り。
まだそう思っているこの少女は
車とぶつかりそうになった時
翼が守ってくれたこと、
前から危ない時は
翼が少女を包み込んでいたことを、
これから先も知らないまま。

11/11/2024, 12:17:10 PM