「あるんだけど…ないんだよねぇ」
ソファでくつろぐ俺は、ちらりと隣りに立つ男を覗き見た。
「なによ?」
上からジロリと見下ろされる。
「何でもない」
どうせ「お前が欲しい」って言っても鼻で笑って馬鹿にされて終わりだし口に出すのも馬鹿らしい。
「俺って可哀想…」
どさくさに紛れて横に立つ男の腰に抱き付いた。
「おま…何やってんだよ気持ち悪い」
力いっぱい俺を剥ぎ取ろうとする。
気持ち悪いって何よ失礼しちゃうわね。
悔しいから目一杯力を込めて抱き締めてやった。
「ふざけんな!皿洗ってる途中で呼ぶから何事かと思ったら何やってんだよ!そんな事する暇あるなら手伝えよ」
「俺ソファの妖精だから動けなーい」
「地縛霊の間違いだろ図々しい」
「ひど…そんなあなたも愛してる♪」
「はいはい、きもいきもい」
「泣いちゃうぞ」
しつこく腰にまとわりつきながら見上げるとにんまりと笑い返されて
「泣け泣け。存分に泣いていいぞ」
とか言いながら優しくあたまを撫でるのやめてくれないかな?
また好きになっちゃうじゃん。
俺の欲しいもの。
隣りには居てくれるけど、心までは中々俺にくれないんだよねぇ。
早く俺に落ちてくれないかなぁ。
待ちくたびれたよ。
(ないものねだり)
3/27/2026, 9:30:25 AM