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幸せに(オリジナル)(秘密の手紙続編)

俺は最期の手紙配達員をしている幽霊だ。
心残りがあって成仏できない人の手紙を相手に届ける仕事をしている。
今日、仕事はオフで、行くところがあった。
姉貴の結婚式だ。

幽霊になって知ったのだが、墓参りされると、そうとわかる体質になっていた。
何なら墓に意識と体が持っていかれそうになる。
姉貴は俺の墓に結婚報告をしてくれた。

5つ上の姉。
当時から付き合っていた人とめでたくゴールインだ。
俺の事故死があって少し伸びてしまったのだと思う。

幼い頃、俺は姉にとても可愛がってもらった。
共働きの親に代わって世話をしてくれた。
俺が野球を始めると、送迎などで母が俺につきっきりになった。
きっと、子供心に寂しかったり嫉妬したりしたに違いないのに、俺は姉に当たられた記憶がない。

姉貴は俺の墓石に結婚式の招待状を置いて、
「あんたも来なよ」
と言った。
現世にまだ残っていた俺は、晴れて出席というわけだ。

結婚式は地元で有名な式場で行われた。
家族卓に俺の席が用意されて、遺影が置かれていた。
時々俺の話題になるが、皆しんみりするのでやめてほしい。せっかくの晴れの場だ。楽しくやって欲しい。

姉貴は親族席まで来ると、俺の写真を見ながら、
「かずや、見てる?」
と言った。
愛おしげな表情に、俺が照れる。
「見てるよ、姉貴。馬子にも衣装だな」
つい、いつものように憎まれ口をたたいてしまう。
相手に聞こえやしないのに。
姉貴は一瞬仄暗い空気を纏わせて、
「あんたがいなくなった喪失と怒りがずっとおさまらなかったけど、これからもずっと忘れないけど……私、幸せになるからね」
最後は明るく言った。
両親が目頭を押さえて泣いている。
俺も泣いた。
「そんなの良いよ…姉貴。ずっとありがとう。一度もお礼も言えずにごめん。俺の事なんて気にせず、幸せになれよ」
幸せになってください。
俺は幽霊で、生身の人間には声も姿も認識されないが、せめてこの気持ち、祈りだけは。
届け。
届け。

3/31/2026, 12:16:42 PM