「まだ知らない世界」
目が覚めると、カサリと葉の動く音が聞こえる。
ここはどこだろう。周りは木々に囲まれて薄暗く、ここがどこで、いつなのかわからない。そもそも、なぜ私はこんなところにいるのか。そして、私は何者だったか。何一つ思い出せない。ただ何かを探していたということだけはわかる。それがなんなのかもさっぱり見当はつかないが。ここで考えているだけでは埒があかないので、森の中を進んでいくことにする。おそらくこの森のことを私はよく知っているのだろう。直感に任せてしばらく木々の間を進んでいくと、とうとう開けた場所に出た。そこにあったのは、小さな小屋。1人で住むにしても少し狭いであろうこじんまりした小屋は、まるで私を待ち構えていたかのような風貌で佇んでいた。扉の目に行くと鍵がかかっていたが、錆びついて壊れてしまっていたようで、いとも簡単に開けることができた。小屋の中に一歩踏み入れると、懐かしい匂い。思わず頬を雫が伝う。きっと私のよく知る世界。
でも、今の私はまだ知らない世界。
5/17/2025, 3:15:57 PM