バスクララ

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白い大きな帽子が似合う黒髪の君。
黄色のワンピースを風に遊ばせている君。
青い花の飾りがついたサンダルを脱ぎ、素足を海に浸している君。
君の目線の先に何が見えているのか、それは僕にはわからない。
同じように僕が見てもそこには煌めく海の水平線、それと交わる青い空しかない。
君にしか見えない何かがあるのだろうか。
気になって声を掛けようとしたら、君はこちらを向いてニコリと微笑んだ。
それがとても寂しそうに見えてしまったけれど、直後に僕を呼びに来た友達に気を取られた一瞬の隙に君はいなくなっていた。
……夏が来る度に君と出会った海へ行って君の姿を探す。
親や友達は君のことを知らないし見たこともないと言う。夏の暑さにやられたのではないかとも言われた。
そうだったとしても僕は君にもう一度会いたい。
蜃気楼でも陽炎でも幻影でもいい。
夏が見せた一時の夢だったとしてもいい。
ただもう一度会いたい。
ただそれだけなんだ。

7/14/2025, 1:46:01 PM