スナエ

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 夜の海は、静かで、入る前から深海にでもいるかのよう。
 それでも、オレは海へ足を進めた。
 海水が胸まできたところで、おまえのことを思い出してしまい、泣いた。小さなガキみたいに泣いた。誰も聴いてないから、泣ける。
 ほんの少し海を増やしながら、オレは進む。
 とぷんと、全身が水の中に入って。ふと、見上げた先には、月の光があった。
 月のように優しいおまえを傷付けるのは、これが最初で最後だから。

8/15/2023, 10:14:27 AM