-ゆずぽんず-

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🌿‬みなさん、お久しぶりでございます🌿‬


新年の投稿依頼の詩のお届けですが、その前に詩についてお話をしてみようかと思います。

これは、人生で二度ほど経験した不可思議な体験談に基づいて詠んでいます。その不可思議な出来事とはなにか。
私が運転する車で、稲川淳二氏の「稲川淳二の怪談ナイト」を終えて、出張先の宿舎へ向けて二時間以上ある道のりを走っている時のこと。

仙台の明るい街を背にしたのはもう随分と前のこと。いま、私は怪談ナイトを共にした相方と共に東北地方の某県某市へむけて山手の道を進んでいる。怪談ナイトの雰囲気や怪談を振り返りながら、二人で他愛もない話に盛り上がっていると、前方右手に青い屋根の一軒の平屋の民家が見えてきた。時刻は二十三時をすぎているが、部屋内や風呂場と思える室内照明が明々と灯り、家の周辺は湯気か霧で白く霞んでいる。

「遅くまで仕事をして、今しがた帰ってきたのだろうか。これから熱い湯に浸かって身体を癒すのだろうか」

そんなことを助手席の相方と話しながら家へ近づいていく。遠目にはあまり良く分からなかったが、近づくにつれてその霧の濃さに気づけば、私はたちまち視界を白い空間に奪われた。

「霧にしても、なんでここだけ? 湯気ならこんなに白くならんよね?」

助手席の相方とこの状況を訝しがりながら、安全のために徐行運転で通過する。視界が明けるまで数十秒を要しただろうか。
霧をぬけた途端に先程まで感じていた緊張感や不安から解き放たれ、胸を撫で下ろす。徐行を続けながら助手席の相方に今のはなんだったのだろうと、目を配りながら訊くでもなく声をかけてみた。しかし、相方から返ってきたことばは私をさらに不安にさせたのだ。

「なにを言っているんです? というか、なんで急にゆっくり走り始めたんです?」

彼は何を言っているのだろう、今の状況なら誰でも同じ対応をするはずだ。視界がほとんどなく、元の速度で走っていれば事故を起こしかねない。

私は彼に対して勘の悪い奴だなどと、呆れながら今の状況を話して聞かせた。しかし、彼からの応えはまたも的はずれなもので、私の感情を揺さぶる。

「あの...、家? 家ですか? そんなもの無かったですよ。それに、霧なんてないですよ! それなのに急に家がどうの、霧がどうのって話し始めて、僕の問いかけを無視し始めるし。急にブレーキをかけてゆっくり走り始めるし、なんなんですか?」

私は私がみたものを、いまあったことを彼に説明した。しかし、私が見ていたものは彼には見えておらず、彼は霧の中での会話などしていないという。私の不可解な言行に何度も声をかけたが、私はまるで反応を示さず、ただただゆっくりと走っていたのだという。

車を止めて、ふたりで後ろを見るが暗くてよく見えない。明るい時間に通ることがあれば、その時に確認してみよう、そう互いに見あって宿舎へと戻った。
翌週の金曜日。出張先から仙台の自宅へ帰るため、相方とふたり、あの夜に不思議な体験をした道を走っていた。あの夜、右手に家が見え、左手はうっすらと畑のようなものが見えていた。ならば、今度は走行車線側、左手に見えてくるはずだ。そう話しながら道をゆくがいけども見当たらない。

ーー結局、その家も畑も何もかもが見つからなかった。通る道は間違えようのない一本道。枝道もなく、国道をそれてこの道に入ると、暫くはこの山手の一本道になる。しかし、何も無かった。道や地形は、仕事で毎日通る道のため、頭に入っている。あの夜、運転しながらみた地形がどの辺か、私も彼もわかっている。
記憶している地形の辺りに来ても家がない。そのまま山を抜けても、家は見つけられなかった。いいや、家が建つ余地などなかったのだ。竹林やうっこうとした木々の壁があるだけで、家が建つような敷地など存在しなかった。

あれはいったい、なんだったのだろうか。数年後、地元へと帰った私は、兄を助手席に乗せて車を運転していた。あの夜に起きた出来事と全く同じことが私たちを迎え、またも不可思議な体験をしたのだった。


オチなどなく、ただただ訳の分からない体験を持ち前の詩のスキルで、私が得意とする詩へ昇華したものが、今回おとどけする詩でございます🍀

ーーそれでは、どうぞ🍊



『ありて、ずれる』


宵闇の
静寂に響く
畏怖の語らいに
ひとたび落ちる
熱と息
身振り手振りの宣説が
ひとひとの心を強く
鷲掴む


遠旅の道なかで
今しがたの怖話に
冷めぬ熱

眠る街を背に
深く沈む闇夜の懐
掻き入れば
内燃の声が無方へ
駆け巡る

薄気味悪さに
宛てなく打ち返す
戦慄の声音

漆黒に霞む青屋根の
小さく佇む平家屋
白霧に抱かれて
奇しく灯り

目を奪う


屋根へと伸びる銀首と
白息を吐き止めない
双口は深闇のなかに
ひときわ目立ち
釘付ける

白幕の内へ潜れば
視界はなく
焦燥と危惧の念に
歩みが遅ぶる

惨憺の心に
ひとり言を投げるれど
虚しく返る言はなし

冷ややかな空気が
肌を撫で
悪寒に身体を
大きくさすり
舵輪を握って
堪忍ぶ

幾拍と長く感じる
時も過ぎ
白闇の外へ抜け
深い溜め息

旅連れは
輪を握る横顔に
訝しむ


道ゆく二人
共する時に
耳目する世界が
分かたれる


暫しのち
いつぞやの家屋を探すも
ついに無し

家建つ隙間も
ーー遠になく

1/26/2026, 11:50:48 AM