8木ラ1

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「僕と君が赤い糸で繋がっていればいいのに。」
騒がしい教室の中、ぼそりと呟く。
そんな情けない独り言はすぐにかき消さてしまった。友達と楽しそうに話す彼女を見つめる。もちろん彼女が僕を見てくれることはない。
小さくため息を吐いて机に顔をうずめた。教室の騒音を子守唄に眠ろうとした瞬間、優しく肩を叩かれる。
「?」
顔を上げると目の前には同じクラスの加藤が立っていた。彼はにやにやと笑いながら僕を見る。僕は顔をしかめた。彼はイケメンで成績も優秀、運動神経もまぁまぁ悪くはない。ウワサでは1000人の女子に告白されたらしい。そんな彼が僕を見て笑っている。なにかやらかしたのかと焦り始めた時、彼がゆっくりと口を開いた。
「さっきの誰のこと?」
口角を上げたまま僕を見つめる。何のことか理解できなかったがすぐに絶望に変わった。その目は全て見透かしてるようで僕を焦らせる。
「落ち着いてよ、誰にも言わないよ?」
信じられなかった。彼はモテるが女遊びが酷い。教師や女子の前では猫を被って僕らの前ではクズ野郎だ。そんなチャラチャラしてるやつの口が堅いなんてわけがない。
僕は重い唇をあげて言った。
「い、言わないよ。口軽そうだし…」
はっとすぐさま口を抑える。つい本音まで口にしてしまった。おそるおそる彼を見るが彼は気にしていない様子だった。
「気になるじゃん。ねえ?」
すると彼は力強く僕の腕を掴んだ。だんだん痛みがまして抵抗する僕に彼は言葉を続ける。
「今日さ、放課後遊びに行こ。」
そういう彼の瞳はどこか独占欲のようなものがあった。

7/1/2024, 3:04:21 AM