未央

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お題「キャンドル」

今日、彼女の命のキャンドルの灯火が消えた。
いつかは、こうなると分かっていた。
ずっと、お医者様に言われていた事だったから。
日に日に太陽みたいな笑顔だった彼女が、夜の月のような静かさになってしまう所を見る度に、ズキリと心が痛んだ。
この人生の中で一番愛した彼女が弱っていく所を見ることしか出来ないのが悔しかった。
でも、その感情を感じることは二度と無いのだ。
暖かく柔らかかった手は、冷たく硬くなってしまった。
その手に縋るように擦り寄り、涙を零す。
僕の灯火を渡せたら、どんなにも良かっただろうか。
何度も神様に祈ったと言うのに、この願いは届かなかった。
彼女は天使に連れ去られてしまった。

「おやすみ、辛かっただろう?」

ずっと病気と戦い続け、ゆっくりと眠れなくなっていた筈だ。
どうか、僕が逢いに行くまでは眠っていて欲しい。
また元気な彼女に僕は照らされたいのだ。
左手の薬指に口付けをして、病室を出る。
空を見上げれば、そこには満天の星空が僕の事を見つめていた。

11/19/2022, 1:46:17 PM