荒城

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【涙の理由】

深夜、重い金縛りで目が覚めた。
まぶたを開けると、女がおれの首に手をかけていた。女はうっすらと透けており、一目でこの世のものではないとわかった。
「ひとりは、さみしいの…」
女はおれの耳元にささやいた。

気がつくと、おれは舟に乗っていた。
両岸には美しい花畑。
傍らにはあの女が座り、泣きじゃくっている。
「もう泣くなよ。おれが一緒に行ってやることになったんだ、もうさみしくないだろ」
おれは女の頭を撫でてやった。
おそらく彼女は、長い旅の相手となるのだろう。
「違うの…」
女はつぶやいた。
おれのことを、憐れんでくれているのかもしれない。おれはそっと、女の手を握った。
女は手をそっと外し、言った。
「いざ一緒に行くってなると、なんかテンション下がっちゃって…明るいところで見るとちょっと好みと違うし…」
えっ、この段階で蛙化現象起こされても。

9/28/2025, 12:20:10 AM