たつみ暁

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国の交流推進で、文通をしている友達がいた。
名前と年齢が同じということ以外、顔も知らない、遠い街の子。

どんなお菓子が好きかとか。
庭に咲いた花が綺麗とか。
弟が生まれたとか。

そんな他愛ない話を、一生懸命紙にしたためて、封をして、郵便屋に託した。

だけど。
ある日わたしの住む村が盗賊に襲われて、家々は焼かれ、男は殺され、女はことごとく連れ去られた。

わたしは足枷をつけられて、遠い街の富豪の奴隷にされた。
閉じ込められた部屋の小窓から、嗤う三日月を見上げては、あの子が出した手紙はどこへ行くのだろうと考えていた。

さらにある晩。
屋敷がにわかに騒がしくなった。剣戟の音も聞こえる。
村が燃えた日を思い出して震えるばかりのわたしの前に、部屋の扉を蹴破って現れたのは、王国騎士。

「やっと、見つけた」

精悍な顔を嬉しそうにほころばせる彼は、わたしの前にひざまずいて、ぼろぼろのわたしの手を取り。

「   」

わたしの名前を、呼んだ。

「これから沢山のことを話そう。手紙では語りきれなかったことが、沢山ある」

それでわたしは彼が誰かをさとって。
とうに渇れたと思った涙が頬を伝い落ちた。

お題:手紙の行方/たつみ暁

2/18/2025, 10:16:54 AM