せつか

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自慢の子だったんです。

涙を浮かべて母は語った。

艶やかで綺麗な髪、パッチリした大きな目。
滑らかな頬に果実のような唇。
しなやかに伸びる手足で元気に走る子でした。

その子が脱ぎ捨てたであろう白いフリルのワンピースには、真っ赤な染みがついている。

大きなぬいぐるみを抱えてニッコリ微笑む姿は、私の理想の夢見る少女そのもので·····。

母の啜り泣きは止まらない。

どうしてこんな事になったのか、あんなに大事に育ててきたのに。
相棒はそんな母親の肩にそっと手を置いて、慰めるような仕草をする。

〝どうしてこんな事になったのか〟
私は何となく分かったような気がした。
肩を震わせ、両手で顔を覆って泣く母親の口角が、微かに持ち上がっていたのを見てしまった瞬間から――。


END


「夢見る少女のように」

6/8/2025, 1:01:08 AM