『宝物』
小さい頃に友達がくれた、赤いリボンのシュシュ。大人になった今も、私の大切な宝物である。
「そんなシュシュ、いつまで持ってんのよ」
「うわ、やばい。そのシュシュ、捨てた方がいいよ」
「そのシュシュ、つけちゃダメ」
でも、周りは宝物を酷評する。私の大切なものを、冷たく侮辱するのだ。宝物なのに。大事なのに。皆だって、大切なものをバカにされたら、嫌なはずでしょ? どうして、平気な顔で私のシュシュに冷たい態度を取るの?
「……そのシュシュ、やめた方がいいよ」
今日は、腕に赤いシュシュをつけてデート。それで待ち合わせ場所の駅前に着いたら、待ってた恋人に言われた。ナイフのような、鋭い台詞である。
「どうして。これは、私の宝物なのよ」
「いや、宝物だろうけど……捨てるべきというか……」
「はぁ? ねぇ、聞こえてなかった? これは、私の宝物なの。捨てるわけがないでしょ!」
赤いシュシュを守るように、私は言った。恋人まで、私の宝物を侮辱するなんて――そんな人だとは思わなかった!
「お願いだよ。そのシュシュを……」
「うるさい! もう帰る! さよなら!」
気分が悪くなり、私はすぐに家へ帰る。全く、どいつもこいつも、私の宝物をバカにして。皆、最低だわ。
「……とても可愛いのに」
赤いシュシュを指先で撫でて、呟く。宝物を素敵と言ってくれる人を、私はずっと待っている。
――ダメだ、聞いてくれない。
「うがあああぁ……」
――聞こえてくる。後ろから、怨霊の恨みの声が。
「殺す……お前、殺してやる……」
――このままじゃ、彼女が呪い殺されてしまう。だから、赤いシュシュを捨ててほしいのに。
「うるさい! もう帰る! さよなら!」
――あぁ、もうダメだ。彼女に、声が届かない。彼女のご家族と友達が言っても、全く聞かなかったそうだ。
「殺す……殺す殺す殺す……」
――周りにははっきりと見えているのに、鈍感な彼女には見えていない。あぁ、苦しい。守れないのがつらい。
「一体、どうしたらいいんだよ……」
神様。どうか、彼女を救う方法を教えてください――。
11/20/2024, 2:18:32 PM