ゆじび

Open App

「涙の理由」


僕が泣かせてしまったあの娘は今は僕の近くにいない。

中学三年生の夏頃。
去年まではお手本となる先輩がいたけれど今年からは
自分達が学校の代表。
受験とか進路とか恋人との遠距離恋愛の始まりだとか
模試とか悩むことがたくさんで、恋人との時間はあまりなかった。
来年の今頃は何をしているのか分からずに少し不安で
心臓に重く、深くなにかが乗っかっているような感じがする。

大好きな彼女も友達も家族も何もかも自分を支えてくれていることは分かっている。
それでも少しプレッシャーがかかる。
全て投げ出して逃げてしまいたい。

学校からの放課後。
少し。本当に少しだけど恋人とコンビニに行って駐車場でアイスを食べた。
少し溶けていたけど心がひんやりするように。
心が少し楽になった。



中学三年生の冬。
いよいよ受験間近。
不安なこともたくさんあって。
苦しいこともたくさんあって。
今までの事を振り返るにはまだまだ早いと分かっているけれどやっぱり考え深い。
少し前まで高校生に早くなりたいと思っていたのに
今はもう少しだけ中学生でいたい。

恋人の近くにずっといたい。

恋人と神社に行った。
お守りを買って家に帰ってまた勉強。
早くこの生活が終わればいいのに。





受験が終わった。
疲れた。眠ってしまいたい。
けれど今は恋人に逢いたい。

恋人にあった。
彼女は僕に言った。
「別れよう」って。
なんでか聞く前に彼女はなぜか泣き出した。
僕を支えてくれた彼女が泣いている。
強くて立派な彼女が。
「なんで泣いているの?」
と僕が聞いても彼女は
「女の子に泣いてる理由は聞いちゃだめだよ。」
というだけだった。
僕はなにも言えずに泣いてる彼女を抱き締めることしかできなかった。


彼女の家族は遠くへ引っ越したらしい。
どうやら僕の恋人はビルの屋上から飛び降りたらしい。もう死んでしまったらしい。
彼女はきっと僕に別れを切り出したときにはもう
死のうと思っていたのだろう。

なんとも言えない重みが心に響き広がっていく事を実感した。

9/28/2025, 2:06:29 AM