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 窓を打つ雨音で目を覚ます。天気は晴れと聞いていたがこれでは洗濯物が干せそうになかった。取り敢えず水でも飲んで…
 首辺りが擽られ動きにくい…。起き上がりにくいなと思ってたんだ。

「ふふっ…」
 腕に馴染みの重さが消えていて、空気を取り込む量が少なかったのは君が布団のように俺の上に被さっていたからだった。
「おはよ」
「おはよう、この状態は何かな?」
「うーん?すぐ起きないように重しになってるとこ」
 首をわずかに傾けて君を見つける。重しになっている君には夜の名残というものが所々に付けられて視界にチラチラと写り込む。柔い感触が意思とは関係なく押し付けられていた。腕を体に巻きつけ横に。今度は俺が、余すことなく君に隙間なくくっついて上目遣いで見つめる。
「これで君も動けないけど?」
 極上の枕が出来たみたいで顔ごと埋めていく。やわらかくて気が緩み、また眠りに落ちそうだった。
「み、耳澄まさないでね」
「理由を聞いても?」
「私のどきどきが止まらないから…」
「ふはっ、なに言ってるんだよ」
 俺のシャツを着たまま可愛いことを。言われたら気になるもので耳を寄せていく。君のちょっとした抵抗にあったが「直に触れて聞いたほうがいい?」と聞けば大人しくなった。
「あ、ほんとだ。心音早いね」
「言ったのに…ずっと馴れないの…!」
 情事の時ほどではないがトクトクトクと早く、中で君の声が反響する。いつになっても初な反応が好ましく、だらしなくにやけてしまいそう。だが顔に出せば君の機嫌を損ねる。

「俺の心臓(『My Heart』)だって早いよ」
 君を一緒に起き上がらせて手を自分の胸に導いた。後から君の耳もピタリとくっつく。さっきと同じ状況だ。
「早いような…そうでないような?余裕そうな音がします」
 余裕がない男なんて格好つかないじゃないか。
「もっと早くさせたい?」
 早くさせる答えなんて1つで、せっかく起き上がらせた君を押し倒す。シーツに広がる髪は美しく、寝起きで呆けてる表情はあどけない。
 唇を、と近づけてぐぅ、と鳴った腹の虫。顔を見合わせて笑い合い
「朝ごはんにしなくちゃね」
 ベッドを抜け出した君の背中を残念そうに追っていると、くるりと両頬を包まれておはようのキス1つ。
「早くなった?」

「…聞かなくても分かると思うよ」
 君と比じゃないくらいの賑やかな音が心臓から。君の不意打ちには俺だって馴れないんだ。





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3/28/2023, 6:46:36 AM