恋人の勤めている会社は、制服が曜日によって決まっている。車のカスタムや修理をする会社なのに女性従業員が多く、その制服を楽しみにしている客もいる。
俺と彼女の出会いは、そっちではなく。患者として彼女が運ばれたところからだった。
だから、彼女の勤め先がそういう会社だなんて知らなかった。
とは言え、俺の先輩はそこの常連客なんだけれど。
でもその会社は敏腕社長が女性ながら、人気にしたお店で、その努力が伺える。
そのお客さんを呼ぶための制服だ。
なんだけれど……俺としては、目のやり場に大変困る曜日もありまして……。
俺が目のやり場に困るということは、恋人もそれなりに際どい格好をしているわけで。
末っ子気質の性格もあってセクハラも受けやすい。と言うか、一番受けているんじゃない?
そんな俺は、やっぱり目のやり場に困りながらも彼女待ちをしています。
俺は休日になったら、彼女にバイクのカスタムをお願いする約束を前からしていた。それで今日来たのだ。
でも、俺が来る前に受けたお客さんが、思ったより大変そうなカスタムの依頼だったみたいで……。
最初はそうじゃなかったと社長さんから聞いた。けれど、あれよあれよと依頼量が増えていったらしい。
先客にあたる男が彼女を見る目。その視線に含みを覚えて、お腹の辺りでモヤモヤする。時々感じるいやらしさ。
そして、俺が見ていない時。俺へ視線を向けているのを感じる。
これって、牽制されてるのか?
俺と彼女が付き合っているのを知らないのか?
ぼんやりと考えるけれど、そんな感情。俺には知ったことじゃない。
ちらりと彼女を見ると、先客の男と視線がぶつかった。
俺は、勤めて優しく、そして柔らかく微笑んだ後、刺すような冷たい視線を送る。
彼女は俺の恋人だと、視線だけで伝えるように。
その意図が伝わったかどうかは分からない。でも、驚いて顔色が悪くなったのを見計らって、最初のような柔らかく笑った。
どんなに彼女にモーションかけようが、彼女は俺のこと大好きで仕方がないんだと伝えるように。余裕を持って満面の笑みを向けてやる。
「君、余裕あるように見せて、大人気無いなぁ」
「社長、分かっているなら言わないでくださいよ」
余裕なんてある訳ないでしょ。
それだけ彼女は魅力的なんだから。
おわり
一五二、鋭い眼差し
10/15/2024, 11:27:44 AM