語り部シルヴァ

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『まって』


「まって!」
どれだけ呼んでも君は振り返らなかった。
そうだ。君はそういう奴だ。

昔から自分のやりたいことに真っ直ぐで
誰も邪魔することが出来なかった。
だからどれだけ待ってとお願いしても無駄なことだ。

それでも君の足を止めたい僕はこれしか方法が思いつかない。
「ねぇ!まってよ!」
それでも君は足を止めない。

「まってってば!!」
三回目により大きい声で呼ぶと
視界の景色が一瞬にして変わる。

夢だったようだ。
初夏の湿気のせいか体が汗でベタベタする。
夢の出来事を振り返ってそりゃあ待ってくれないわけだ。
と一人納得する。

君はそういう奴だ。
夢でも夢じゃなくても僕よりも進んでいて
君の背中をいつも追いかけていた。
僕はずっと立ち止まったままだ。
だから君に止まって欲しかった。

「あー...待ってて欲しかったなあ。」
僕は見たかったのは君の背中じゃなくて
君と同じ景色だったんだよ。

語り部シルヴァ

5/18/2025, 10:39:37 AM