喜村

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 あたりは真っ暗、暗闇だった。
そんな中に忽然と、遠くの方で光が揺らめいていたら、みんなはどうする。
 怖くて寂しくて何もわからない黒の世界に、ぼんやりと青白く光るものや、ゆらゆらと赤い光が見えたら、その不安を打ち消してもらうために、近づいてしまうだろう?

 私は虫である。
明るいものに飛び付くことがある。

 店前の青白い光にアタックして、全身に高圧電流を流されてその場に倒れた仲間をみた。
 キャンプファイヤーの明るさに魅了されて、体が燃えて消えた仲間をみた。
 たとえ間違いだったとしても、私たち虫の『さが』である。
行かなきゃよかった、と後悔しても、そういう性質なのだから仕方がない。

 最期に見えた光は、闇の中の一時の希望の光で、痛いや熱いや苦しいよりも、これが綺麗で残酷な光なのだな、と思った。
思ったと同時に、意識がなくなった。


【たとえ間違いだったとしても】

4/22/2023, 12:16:26 PM