子供の頃は、大人になれば好きな人と結ばれて幸せになれるものだと当然のように思っていた。
しかし、現実は上手くはいかない。
恋焦がれる人がいたとしてもその人が自分を思ってくれているのかなんて分かるわけがないのだ。
現に毎日顔を合わせていても届かない想いを抱えたまま1日が過ぎていく。終わらない書類の山に埋もれながら柄にもなく耽っていると悩みの種がやって来た。
「お疲れー。珍しく書類に埋もれてんね」
「悟」
家柄も良くスタイルも顔もいい。こんなやつと同期だと自分がちっぽけな姿に思えてくるし、なんでこんなやつ好きになってしまったんだろうって何度も何度も思うんだけどなんだかんだ助けてくれたり辛い時、側いてくれたりするもんだからもう無理なのよ。好き。
「現場続きだったから報告書とか書けてなくてこの有様よ」
私より何倍も仕事してる悟に泣き言漏らしてる自分が情けない。
「まぁまぁ、お土産買って来たからコレで元気だしなよ」
ちょこんと目の前に置かれたキラキラ光る砂糖菓子
「きれー、これ金平糖?」
駄菓子屋とかで売っているものとは少し違くて全部が透き通っていて食べるのが惜しいくらい。
「そ、なんか限定らしくて並んでたから買ってみた。俺にも一口頂戴」
中身を開けると上品な香りが広がる。色んな色の中から一際輝いて見える青い金平糖を手に取り悟の口に放り込む。
「んまい」
「悟とおんなじ目の色だった」
「…選ぶ基準それ?」
「そ、綺麗だったしいいじゃない」
子供の頃思い描いていた人生とはかけ離れてるけど好きな人の近くで生きれるって事は案外悪くない。
もう一つあった彼と同じ色の金平糖を食べながらそんなことを思う。
-子供の頃は-
6/24/2024, 10:16:57 AM