せつか

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細長いグラスに透明な液体が注がれる。
そのままでも充分美味いそれを、彼はそっと持ち上げて、ライトに翳してしばし眺める。
しばらくそうして思案していた彼は何かを思いついたように戸棚に向かうと小さなガラスの小瓶を取り出した。

水色、紫、黄色、白。
小瓶の中には色とりどりの小さな星粒。
彼はそれを数粒摘むと、グラスの中に落としていく。
キン、コン、と可愛らしい音を立てながら、小さな星はグラスの中を漂っている。
ゆっくり溶けていく小さな小さな星の粒を、彼はうっとりと見つめている。

「あなた、それ好きですよね」
「うん。酒もコンペイトウも、どちらもそのままで充分美味しいけれどね。こうすると綺麗だし、どっちも美味しくなる。君も飲むかい?」
「私にはちょっと甘すぎますね」
「美味しいのにな」
「私はこれで」
ワインをあおりながら、グラス越しに彼を見る。

コンペイトウも、それを堪能する彼も。
私には甘すぎてかえって毒に見えてくる。

溶けきらずに残った可憐な星が、グラスから溢れて彼の唇から喉へと消えるのを、飽きることなく見つめていた。


END



「星が溢れる」

3/16/2024, 1:03:40 AM