森川俊也

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朝日がまだ昇らぬ頃、私はふと目を覚ました。
なんだか、嫌な予感がしたのだ。
けれど、あたりを見渡しても寝る前と変わったことは何一つない。
無造作に脱ぎ捨てた服の位置も、壁に掛けた上着も、乱雑に置かれた本すら寸分の違いもない。
なのになぜだか違和感が拭えない。この違和感はなんだろう?
まだ夜が明けてすらいない。このままだと、仕事に支障が出るだろうともう一度目を瞑る。
目を瞑って瞑想に入る。
私は瞑想しなければ寝れない質なのだ。
今日の瞑想は何にしようか決めあぐねていると、私じゃない誰かが言った。
「自分という存在について。はどうだろう?」
思わず、普段から飛び起きる。だけど、周りには誰もいない。
冷静に考えてみればそれはそうだ。近くにいたとしても、思考を読み取るのなんて不可能なのだから。
なら一体、あの声はなんだったのだろうか。
私は、再び目を瞑って、あの声の正体について考えることにした。
仮説は2つ。1つ、あれは私の深層心理である。1つ、あれは科学的に証明の出来ない何かである。
それぞれ検証してみることにした。
前者の場合は、深層心理だから自身が熟知していないのも分からなくはない。けれど、可能性としては限りなく0に誓いのではなかろうか?後者においては、科学人間としては肯定したくないが、辻褄は合う。
きっと、こうやって辻褄合わせのために神などという存在は出来ていったのだろう。などとも思う。
だが、考えている内に頭がおかしくなってきた。それこそ、まるで人知を超えた力にでも侵されたのかのように。
私ってなんだろう?私は私なのか?私というのは架空の存在に過ぎないのだろうか?
そんな哲学的問いばかりが悶々と浮かんでは消え、浮かんでは消え。
あぁ…私は…私は……
…貴方は誰?
気がつけば私は、深い眠りへと誘われていた。

2/20/2025, 8:54:01 AM