雲ひとつない空が広がっている。
葉がすっかり落ちた、やせ細った枝の上で、カラスが鳴いている。
日が出ていて、風がなければ、冬晴れの昼は暖かい。
暖かい太陽は、真っ青な空に高く登っていて、金色の煌めきを、地面の真っ白な雪たちに投げかけている。
嵐の前の静けさ、とは、こういうことを言うのだ。
手袋ごしに悴んだ手で薪を拾い上げて、ため息をつく。
この星が雪と氷に覆われてはや10年。
気温は下がり続け、夜の吹雪はだんだん酷く残酷になっている。
今夜も酷い吹雪になるはずだ。
研究棟の気象予報士のみんなが、口を揃えて吹雪を予報しているのだから。
今夜はいったい何人が、寒さで眠れなくなるだろう。
いったい何人が、寒さの中で永遠の眠りにつくだろう。
世界がずっと吹雪で、ずっと薄暗い雲に覆われた寒い寒い世界なら、私たち人類も、諦めて滅ぶことができたのだろう。
しかし、太陽は暖かい。
こんな寒くて凍える世界でも、日中、特に晴れの日は、すこし暖かい。
だからこそ、夜が、吹雪が、雪が。
私たちはまだ怖いままなのだ。
少しでも寒さを凌げるように、私は寒さの中で薪を拾う。
カチカチに凍りついた小枝を、藁束を。
厚い厚い雪の中から。
そうでないと、寒さと吹雪の恐怖にどうにかなってしまいそうだから。
太陽が雲ひとつない空の上で輝いている。
痩せ衰えた木の上で、カラスが鳴いている。
氷点下の世界でも、日の光は厚い雪の上に煌めいていた。
1/6/2025, 9:28:36 AM