花純

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君は僕に、笑顔で告げた。


「余命宣告されたの。
余命半年、だって。」



僕はそのとき、

気持ちが大渋滞していた。


怖い、淋しい、悲しい。



この気持ちを君に

伝えたかった。



「いかないで」

僕は君に泣いてすがった。




君はただ、

「ごめんね」とだけ言った。


1日1日過ぎていくのが怖かった。

もう明日死んじゃうんじゃないかと。


明日、君がいなくなるかも、って

怯えながら過ごした半年間。




10月25日。

夕方の入院室。

窓から夕日が差し込んでいた。



君は弱々しい声で

いつものように、

「ごめんね」と言った。


だんだんと君が痩せていくのを

近くで見ているのは苦しかった。


君はもう変わり果てていた。


全身ほっそりしてて

腕もガリガリで。


あんなに、大食いだったじゃないか。

これでもかというほど焼肉を

バクバク食べていたじゃないか。


今ではもう、こんなに痩せてしまった。




「ごめん、ごめんね...」

君は泣きながら何度も何度も言った。






もういいよ、大丈夫だから。


そう言いたいのに、言えない。

気づけば僕の目からも

涙が溢れだしていた。


ただ涙だけが無駄に多くて

言いたい言葉は言えなかった。



心拍数のグラフが上下する。

───安定しない。



待っても待っても

ガタガタと不安定な心拍数。



ピッ、ピッ、ピー...


沈黙の中、心拍数のフラット音だけが

入院室に響く。



この音が鳴り止んだ頃には

君はもう────



その時、ふと我に返って、

その場に立ち尽くしていた自分を

1回殴ってやりたいと思った。



早く、人を呼ばなきゃ

本当に、死んじゃう。


走り出そうとした時。

何かにグイッと引っ張られた。

驚いて、わっ、と言って、

下を向くと手が服を掴んでいた。

顔を見なくても分かった。

君が、僕の服の裾を掴んでいるんだ。

僕はその手を振りほどこうとした。


でも、人を呼びに行っている間に

君がもし死んじゃったら。

手を振りほどいて、さよならになったら。


そっちの方が嫌で、僕は振り向いた。

君は、泣きながら笑っていた。

「ねえ、約束しようよ」

君は、小指を差し出した。

約束、?

君は続ける。

「これが、最後になるかもしれないし」

僕は反射的に言った。

「そんなこと、言わないで...」

涙が頬を伝う。

僕、こんなに泣き虫だったっけ。

いやちがう。

君の前だから、泣き虫なんだ。


「うん...ごめん。」

君は謝ってから、

手で目を擦った。

涙を拭こうとしているのだろうか。

全く拭けていない。

それから君は”約束”の話を始めた。

「わたし、彰のことだいすきだよ。」

急な愛の言葉にドキッとした。

君は続ける。

「だからわたし、死んでも忘れたくない。」

「彰のことも、今までの思い出も...」

君は泣きながら言った。

君の言葉がグサッと胸に刺さった。

いい彼氏ならここで、慰められるんだろう。

しかし僕はちがう。

「忘れないで。」

1文字1文字ゆっくり言う。

君は、僕の言葉を聞いてから言う。

「彰も、私のこと忘れないで...」

ふたり共に泣いていた。

「約束、しよう」

君に言われるより先に言った。

君は頷いた。

小指を出す。

何も言わず、

ぎゅっと小指を握りしめる。

君は、精一杯の笑顔でもう一度、

「だいすき。」と言った。


君の温もりを感じながら、思う。











君が死んでも、君を忘れない。












絶対に、忘れない。











































































































































あの日、君は儚く星になった。





あの日からもう5年が経とうとしているが、

僕の頭の中は君でいっぱいだ。






天国にいる君へ。


5年がたった今でも、

約束を果たしています。

これからも、守り続けます。

大好きだよ。






心の中で架空の手紙を創りあげた。


君のことだから、君も約束を

守ってくれていることだろうな。



これから何年、何十年、何百年経とうと

僕は君でいっぱいだ。


どんなに離れていても、

僕の中には君がいる。
























「どんなに離れていても」



病院のドラマとか見たことないから
ちょっとおかしいところあるかもです。

「彰」は本の(登場人物の)名前を
お借りしました。

「君」が死んだのは5年前の10月25日。
10月25日 は私が初めて失恋した日です。







































































4/26/2025, 12:28:50 PM