子供頃、よく思っていた。
絵本に描かれた鳥かごの鳥は、どうして逃げ出さないのだろうかと。
おとぎ話の鳥かごはとても簡易に描かれていて、鳥がちょっと頭を働かせたらすぐにすり抜けられそうに見えたから。
そしたらすぐ、青空を羽ばたけるのに。
大人しく、細い止まり木に留まり続けるのは何故なのか。
大人になった今なら想像できる。
逃げ出したとしても、生きられないのを知ってる。
あの絵本の鳥は賢かったんじゃないだろうか。
ひとりで餌を取れないひ弱な鳥は、だから逃げ出さなかったんだ。
狭くても、飛べなくても。
ここに居れば餌を貰える。
……社会の歯車に成り果てた。
夢を追えない自分と重ねて苦笑いを噛み殺した。
羽を畳んで、行儀よくそこに居る。
飛べない鳥じゃない、飛ばない鳥。
俺は今日も、華奢で形だけを整えたその鳥籠の中で。
見る事の無いだろう青空を横目に、息をしている。
7/25/2023, 12:45:59 PM