まそむ

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僕の大事な恋人には、言葉が届かない。
先天的に聞こえず、話せないのだ。

最初に彼女に会った時、僕は手話を習っていた。
僕は学生で、彼女は特殊養護学校に通っていた。
ボランティアのつもりで一緒にいた。
やがて、彼女の無垢な笑顔に惹かれていった。

彼女は自分の声量を調整できない。
だから時々びっくりするほど大きな声をあげる。
言葉にならない、感情。多くが驚きの声だ。

僕が手話で覚えた歌を、体を揺らしながら披露する。
彼女は途中から一緒に手話で歌ってくれた。
そして拍手。
あたたかい気持ちになった。

その後、彼女が何かの歌を手話で歌い始めた。
何だろう? わからない。
歌い終わって拍手をすると、彼女は照れたように笑った。

わたしの つくった うた

手話が、今の歌を彼女の自作だと告げる。
僕は、手話で答えた。

おぼえたいな おしえて いっしょに うたおう

こうして、彼女は僕の恋人になったんだ。
まだ、ポケベルや携帯、スマホが普及する前のお話。

【君が紡ぐ歌】

10/19/2025, 11:25:30 AM