色野おと

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風邪と言えば、
この5年間一度も風邪をひいてないのですが。

おバカになってしまったのやも(笑)
《馬鹿は風邪をひかない》って子供の頃からことわざとして知ってはいるけど、この言葉の意味をちゃんと考えたことがなかったように思う。

調べてみると、江戸・天明六年(1786年)に松葉軒 東井(しょうようけん とうせい)なる人物が編纂した諺語(げんご)辞典に《馬鹿は風邪をひかない》と同じ意味とされている「信天翁凮不引(あほうかぜひかず)」ということわざが記されている。


なんでアホのことを表現するのに“信天翁(しんてんおう)”という漢字を使ったんだろう? って思うのよね。


調べてみると、「あほう」って言葉は知られている限りで古い時代だと鎌倉時代に遡るらしい。
鎌倉時代前期の歌人である鴨長明の書いた仏教説話集の流布本『発心集(ほっしんしゅう)』八巻のなかで「臨終にさまざま罪ふかき相どもあらはれて「彼(あ)のあはうの」と云ひてぞ終りにける」とある。

文字(漢字)表記としての「阿呆」がアホの意味として書物に出てくるのは幕末で、慶応三年(1867年)にアメリカ人宣教師ヘボンが編集した日本初の和英辞典である『和英語林集成』なので、室町時代の「愚物(あほう)」という表記が出てくるまでは「あはう」「あほう」「安房」という書き方しかなかったわけなのよ。

信天翁(しんてんおう)というのは和名ではアホウドリと呼ばれている鳥のことを中国・明(ミン)代の『丹鉛総録(たんえんそうろく)』という書物のなかで記されていた漢字表記。この漢字が日本に入ってきたときにアホウドリのことを意味する漢字だと知って、当て字で「あほう」と読むようになったらしい。で、その説明の和訳をネットで探すことができたんです。個人が訳したものなんですけど、それによると、

《信天翁は自分の餌である魚を自分では捕ることができないので、鷹が捕まえて取り落としてしまった魚が空(天)から落ちてくるのを信じて、そのずっと待っている様子がお爺さんのようで暢気な鳥である》

……ってことらしい(笑)


で、その状況を想像してみたの。
鳥のことじゃなくて、お爺さんのことを。岩場で竿を持って釣り糸を海に垂らしながらも、ポカーンと呆けて空を見上げつつ鷹が捕獲した魚を落としてくれないかなあ~なんて思って、ずっと竿を持ちながら岩場に座ってるの(笑) でもお爺さんはその時間を全然苦痛だなんて思ってなくて、むしろ愉しんでいるのよね。周りで見ている人はそのお爺さんのことを「なにやってんだ、あほうだなあ」って思うかもだけど、本人はお構いなし。だってお爺さんはずっと待っていられるように、ちゃんと準備していたのよ。あほうなんかではなくて、本当は賢くてしっかり準備出来ているから、あほうのように振る舞えたんじゃないかなあって。

そんなふうに想像してみたら、《馬鹿は風邪をひかない》ということわざが今までの認識とは違って思えてきたのよね。自分の置かれるであろう状況を予測した上でしっかり準備ができていれば、どんな状況になっても、たとえ馬鹿に思われる状況になったとしても風邪をひくリスクは抑えられるって。

馬鹿になれるほど準備の出来た人は風邪をひかない。って、そんなふうに思いたいなあ。



テーマ/風邪

12/16/2023, 3:53:45 PM