はるか昔、まだ太陽が動いていると思われていた時代。電灯もなく夜は暗いため、無数の星々が肉眼で見えていた。その美しい星空を草原で仰向けに眺める男女がいた。
「あの星とー、あの星とー、それからあれとあれとあれをつなげるとね」
腕を空にあげて一つ一つ星を指さしながら彼女が言う。
「うーんと、ちょっと待て。どれのことだ?」
片腕を彼女の肩に添えて、もう片方の手を使って星をひとつずつ指さす。
「違う違う! それじゃなくてあれ!」
指で示すものを伝えようとする。
「あれのことか?」
「そうそう! それを繋げるとね」
彼女が指をなぞっていく。
「じゃーん! くまの完成!」
「うーんと、うんうん」
彼氏は改めて繋げて、頭に少しクエスチョンマークを浮かべながらも大体はわかったという様子で頷く。
「あれがしっぽ、あれは顔!」
彼氏は頷きながら、自分も何かを繋げようと思案する。だが、彼女の想像力にはかなわず、再び彼女が星々を繋げる。
「いやー、よくそんなに繋げられるな」
もう諦めたのか彼女の顔を見つめる。
「えへへー、すごいでしょ」
そんなやり取りを毎日続けていた。
「あれとあれとあれをー」
「あれは昨日も使っただろ!」
「たしかに、でも2回使っちゃだめではない!」
「それはずるいぞ!」
「えー」
彼女がむうという顔をするので、彼氏は訂正し、彼女は笑顔になる。
2人が毎日同じことを続けているうちに、88もの星座がうまれていた。
10/6/2024, 8:00:07 AM