「相手に悟られている」
と感じると、途端に心が落ち着かなくなる。
そうして「落ち着かなくなっていることが相手にバレている」
と感じると、ますます落ち着かなくなる。
発端は自分なのだが、
急にまわりの視線が気になる時があるだろう?
自分がそわそわし出したことに相手が気づいて、
相手が自分に気を遣っているのを感じたりすると、
さらにそわそわに拍車がかかる。
落ち着かなくなる。もうあかん。
気ぃつかわんといて。って思う。
相手が気を遣い出した=自分の異変に気づいた
=自分の内面を察した=自分の内面がバレている
=自分の内面が悟られている
という方程式が成り立ってしまう。
やめてほしい。
いや、相手は悪くないんだけどさ。
いや、気のせいかもしれないんだけどさ。
その気まずさに耐えられないのだ。
『あはは、大丈夫だよー』
『気まずくってもいいじゃない』
『気まずくって何が悪い?って開き直るくらいでいいんだよー』
と漫画「東京大学物語」の水野遥似の少女の声が聞こえた。
たまに聞こえるのである。
『そういう時はタスクを与えるといいんだよー』
『何かに集中してる時は気にならなくなるよ』
『君、集中力はあるもんね』
『私、知ってるよ』
甘い匂いの春の風に、
甘い匂いのする髪を揺れさせて、
水野遥似の少女はにこにこしながら言った。
その甘い匂いに、またそわそわしたのだった。
―心のざわめき―
<壱>
完
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「拝啓
あなたはいま、心がざわざわしているでしょうか?
わざわざこれを書くということは、もうお分かりですよね。」
という手紙を、ゆうべ机の一番上の引き出しの奥から発見したが、
ベッドの下になにかの気配を感じたこと以外は
特に変わったところはなかった。
―心のざわめき―
<弐>
完
3/15/2025, 11:35:08 AM