一体どれだけ歩いたのか、それはもう解らない。
ただぼんやりと、気の向くまま、足が向いた先を目指していたのかさえ曖昧で。
ーーーそうしてたどり着いた街は、あり得ないくらい懐かしい姿をしていた。
「……何で」
その問いに答える声はない。
ーーーない、はずだった。
「ーー!! 何ぼんやりしてんだよ!」
不意に聞こえた声に、思わず目を見張る。
嘘だ、と声にならない声が喉から滑り落ちた。
「ーー? どうした? 何かあったか?」
じっと見つめてくる目に、何も返せない。
嘘だ、そんなはずは……。
「本当にどうしたんだ、ーー? お前がボンヤリするなんて珍しいな」
ぽん、と肩に置かれた手は、確かにそこにあって。
嘘だ、嘘だ! だって、こんなことって……。
「ーー」
一番聞き慣れていた声に振り返るとーーー。
「ーーさん……?」
「お帰り、ーー」
ーーさんはそう言って俺を抱き締めた。
「帰れたんだよ、ーー。ずっとずっと帰りたかった”場所”に、やっと帰ってこれたんだ」
その言葉に、ようやく理解が追い付いた。
ーーーあぁ、そうか。 ……そうだったんだ。
ストンと腑に落ちた途端に、様々な感情があふれて止まらなくなった。
それはーーさんも同じだった様で、今にも泣き出しそうに笑っていた。
「おーい! 2人ともマジで置いてくぞ!」
「むしろ置いてくか? 案外、面白くなりそーだしな?」
「その後が面倒だって、解ってて言ってるよね?」
少し離れたところで、3人が俺達を呼ぶ。
それが泣きたくなるほど嬉しくて、帰ってこれたことをさらに実感して、感情に縛られた体はやっぱり動かなくて。
ーーーでも、置いて行かれるのはもう嫌だったから。
「ちょっと! 置いていかないでくださいよ!」
「置いてくなんて3人ともズルいよぉ~!」
慌てて駆け出した俺達を、3人は笑って待っていた。
遠くの街へ
2/28/2023, 1:57:54 PM