やなまか

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誰も悪くなかった。
根っからの悪人なんて居なかった。

神は今回の魔族の地上への進軍に対して、巫女でもなく王族でもない孤児に勇者の称号を与えた。

これまで人々が戦争後に争う様子を嘆いてのことだった。

結果として、勇者は孤児だからと爪弾きにあったと思えば、戦後は王族の政治の道具として利用されかけた。

そして現在、魔族の王に囚われ、魔界統一に利用されているという。
助け出さねば。という神の思惑をよそに、二人は案外仲良くやっている。

ご飯を支度するのは勇者の仕事だった。
「ちゃんと野菜も食べなさいよ」
「食わんといったものをわざわざ出すお前が悪い!」
勇者は女で、魔界の王は男だった。
「あのねー。そろそろお前ってのやめてよ」
「言えるか…今更」
地上を欲した魔王はなぜか 勇者の少女に惚れており、少女も甲斐甲斐しく世話を焼いている様子。

おやおや。神はもう少しこのままごとを見ていたくて空から眺めるにとどめた。
次の魔族の進軍はずっとずっと先になりそうだ。

2/1/2024, 3:22:17 AM