SAKU

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切れた息を抑えることもせずに、まばらに草が生えた地面に大の字に寝転がる。汗が地面に濃い影を落としているだろうが、木々の枝に切り取られた青い空しか視界にはない。
人間なども見えないが、近くにいることは知っている。
木剣は離さずに、もうダメだ、無理、鬼だなんだと言って見せても、鳥が囀っている程度としか思ってなさそうだ。楽しそうですらある。自分でもたまにうるさいなと省みるので、豪胆さなのか、包容力なのか、単に耳が悪いのか。
では少し休憩するか、との言葉にようやく息を整えるのに意識を向ける。空気は澄んでおり、肺はめいいっぱい初夏の青臭さを取り込んだ。
喫緊の事態がなければ休むのも重要だと口にする。効率よく休むためには切り替えを体と脳に覚えさせるのが……
言葉は耳を素通りしていく。
目尻を伝う汗は不快だが、睡眠不足と疲労によって瞼が落ちてくる。
そうして一瞬の体感。横にごろりと勢いよく転がった。
自分の頭があった場所に深々と刺さった木剣は、二寸は土を抉っていた。最近は雨の気配が遠く、固まった地面を。
落ち着いた汗が違う理由で額を伝う。
休憩は終わりだと無常に告げる声が澄んだ空気に響き渡った。

7/16/2024, 9:40:29 AM