願い事なんて、子供のするものだと、いつからか思い込んでいた。
瞼を閉じて手を合わせる仕草すら、恥ずかしいと笑い飛ばすような年齢になって、
それでも、夜が深くなると、時々胸の奥がひどく静かになる。
叶えたいことなんて、ないわけじゃない。
むしろ、口に出した途端に壊れてしまいそうで、
だからこそ誰にも話せなかった。
願い事っていうのは、たぶん、叶えたいからするんじゃない。
叶わないと知っていても、
「そうであってほしい」と、ただひとつ、心のどこかで願い続けること。
それはもう、願いというより祈りに近い。
私はその時、ほんの少しだけ手を伸ばした。
誰にも言えない願いを、誰にも見えないところに置いておくように。
そして何事もなかったように、また朝を迎えるのだ。
それでいい。
それだけで、生きていける気がした。
【 願い事 】
7/7/2025, 11:33:47 AM