たやは

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帽子かぶって

「帽子かぶって行きなさいよ。」

幼い頃、暑い夏休みの昼下がり、友達と遊びに出かける私に母がよく言っていた言葉だ。その時は、いつもいつももうるさいと思うこともあったが、今は私も2歳になる娘に必ず帽子をかぶせてから外に出かけている。

子供も思う気持ちは昔も今も変わらない。私も少しづつ、母に近づけているのだろうか。子供のことを思い、時には厳しく、時には優しく手を差し伸べてくれた母。
1番尊敬できる存在だ。

そんな母が少しボケていている。同じことを何度も聞き返したり、家の鍵やリモコンが何処かにいったと1日中探し回っている。
そんな母に大きな声をあげて怒ってしまう事がある。怒っても仕方がないことは理解しているのに、母が変わっていくことが受け入れない。とても悲しい。

怒ったところで仕方がないなら、笑って過ごすことはできないか。母だって怒られより楽しいほうがいいはず。

「リモコン知らない。さっき使ったよ。おかしいねぇ。」

「さっきタンスの上で見た。」

「本当だ。あんた凄いねぇ。なんでも知ってるね。なんでもおばさんだ。」

「そうそう。なんでも聞いて。」

なんでもおばさんって何?まあ、母が楽しそうならいい。何度も聞かれたら何度も同じことを答えたらいい。探し物は一緒に探したらいい。
笑って楽しく、疲れない程度に遊び半分くらいでいい。
それが長続きするコツだから。

娘と母に帽子をかぶせ、3人で公園に向かう。今も母を尊敬しているが、娘と遊ぶ姿は子供のようで可愛らしい。

いつまで長生きして欲しい。
お母さん。これからもよろしくね。

1/28/2025, 1:20:25 PM