ミヤ

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"透明"

透明な水に一滴ずつ赤を垂らす。
ゆらり揺らめく深紅の帯が滲み、全体に薄く伸ばされ広がっていく様子を見守った。
次は青。筆から滴り落ちた雫が水面に斑点を描き、透いた赤に混ざって徐々に紫に変わる。
クルリと水をかき混ぜ、次は緑を、更に黄色を…と次々に色を加えていく。
ただの暇つぶしだった。
途中からは面倒になってチューブから直接色を落としたっけ。
絵の具箱すべての色を混ぜ終わったその先に残ったものは、黒でもなく、白でもなく、勿論透明のはずもなく、ヘドロのような色をした液体だった。

筆洗いバケツを勢い良くひっくり返すと、汚泥のような水が流れ出すと共に、溶け切れずに沈んでいた絵の具の塊がシンクにベッタリとへばりついた。
洗い場を汚したって叱られたなぁ。

単色は美しい。
混色もある程度なら深みが出る。
でも、過ぎれば毒だ。全てが台無しになる。

感情だって同じだ。
どこまでも透明であれたらいいのに。
抱え込むものが増えるほど醜く混ざり、濁り、曇っていく。

3/13/2025, 3:01:52 PM