テーブルの上に並べられた二つの茶碗。
以前はひとりでいいと思っていたのに、ふたりだと、こんなにも気持ちが変わるのか。
「どうしたの?じっと茶碗を見つめて」
妻は料理が乗った皿をテーブルに並べながら、俺に言った。
「いや、ひとりよりふたりのほうが食事は楽しいなと思って」
「ふふ、料理もそんな風に褒めてくれたら嬉しいのに」
妻は悪戯っぽく笑う。
「も、もちろん料理も美味しいし、毎日作ってくれていつも感謝してる」
「なんか言わせた感じになっちゃったけど、ありがとっ」
毎日思っていることだけど、照れくさくて口に出して言えない。
思うだけじゃなくて、きちんと声に出して言わないとな……。
「よしっ、それじゃ食べよっか」
料理を並べ終えた妻は向かいの席に座り、手を合わせる。
俺も、手を合わせた。
「いただきますっ」
「いただきます」
ひとりの時は言わなかった食事の挨拶。
誰かと一緒だと、今までしていなかったことをするようになり、それが当たり前になる。
これからも、ひとりで出来なかったことを、ふたりで共有していきたい。
妻の作ったご飯は、今日も美味しかった。
8/31/2025, 1:03:15 AM