「また違うよ」
先生はいつも通り、原稿の束を突っ返してきた。
「『くもり』は『曇り』と書く。自信の無い漢字はひらきなさい」
前に『わかる』を『分かる』と書いたら、
『「分かる」は分かたれるものに使う。理解の意味で使う漢字じゃあないよ』
それに『気使い』と書いたら、
『気をつかうのは「気遣い」。まわりの誤解に引っ張られない』
と、まあとにかく、変換ミスに逐一口出ししてくる。
肝心の中身については、「そのうち芽が出る」ばかりで、具体的な感想や指導をくれたことはほとんど無い。
ため息ひとつ、つくと。
「でも」
ばららっ、と。
紙束をめくりながら先生は言った。
「今回の話は気に入った。もっとブラッシュアップすれば、プロで通るだろうね」
ああー、もう。
たまのそういう言葉が、わたしの心の雲を吹き飛ばすんだから。
2025/03/23 雲り
3/23/2025, 10:14:37 AM