『好きになれない、嫌いになれない』
「ごめん」
言葉と表情だけは一丁前に申し訳なさを浮かべて、あなたが頭を下げる。
もう数えるのも馬鹿馬鹿しく思えるほどに多い、あなたのごめんに翻弄された日々が頭の隅でちらついた。
嫌い、だなんて投げ出してしまいたい言葉が喉につっかえて、その代わりにもういいよ、なんて諦めが顔を覗かせる。
あなたがさっきとは違う、わかりやすい安堵を顔に張り付けてもうしないよ、とこれまた聞きあきた言葉を紡いだ。
他の子にもおんなじことしてるんでしょ。私知ってるよ。
どす黒い感情が渦巻いて、だけどそれを悟られないように信じてるからね、なんて思ってもいない言葉を投げ掛ける。
「ありがとう」
あなたの腕が伸びて、私の背中に優しく巻きついた。
そうやって誤魔化すところも、何回だって繰り返すところも、中途半端な優しさを見せるところも、全部全部。
4/29/2025, 2:03:54 PM