hama

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帰り道の途中、人気のない公園の雨に濡れたベンチに腰を下ろす。
重苦しい空を見上げながら目を閉じて雨に打たれた。
雫が頬を伝って落ちていく。
暫くそうして濡れて、項垂れて開いた視界の先。足元には小さな可愛らしい白い花が何輪か咲いていた。
ベンチは雨避けになってはくれなかったらしい。僕と同じように濡れていた。

なんとなく手にとって、『スキ』『キライ』と雨に打たれながら白い花の花びらを一枚一枚取っていく。

最後に残る一枚に手をかけて取ることをやめる。

最後の一枚を取ればそれは予定調和と希望的観測。
それに気づいたのはいつだったか。

そんなはずないと分かっているのに、可憐な花を手折って占って、一喜一憂して、現実で失望と絶望を突きつけられる。

『好きだよ』
『オレもスキスキッ』

振り向きざまに満面の笑みで返されたその言葉に、僕の欲しい意味は含まれていない。
どこまで行っても平行線で、交わることはないと知っている。

ポトリ、と一枚残った白い花を手から離せば、足元に出来た水たまりに落ちる。小さな波紋が起きて、その周りには散り散りなった花びらたち。

もうひとつ手折って、また繰り返す。
『スキ』から始めて、今度は残さずすべての花びらを取って、『スキ』で終わる。
これは希望的観測ではない僕の想い。


花占いの犠牲になった小さな花たちの残骸は足元の水たまりに揺らめく。

『好き』になって…ゴメン
『嫌い』になれなくて…ゴメン



2023.6.13/好き嫌い

6/13/2023, 5:08:47 AM