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 合格を「桜咲く」と言ったりするけれど、なら不合格は何と言うのだろう。「桜散る」? 咲いてもいないのに?
 黄色い声を上げて抱き合う集団や、その場に崩れ落ちる女子、両腕を天に伸ばし吠える男子。そんな集団を前に、どうでもいいことを考えた。自分の桜が咲かなかったことなど他人事のように。3月の風はまだ、冬みたいに冷たいのに、花びらだけは春みたいに舞っていた。
 
 4月、既に葉が混じった桜の下を、まだ身体に馴染まない制服を着て歩く。滑り止めといえど、入ってしまえば中学とは違う環境や今までより難しい勉強についていくのがやっとで、志望順位なんて忘れてしまいそうだった。
「その高校で1番になりなさい」
 受験でお世話になった塾の先生は言う。もっと偏差値の高い高校を狙っていたのだから、滑り止めの学校で1番になれるはずって。その理屈には納得しそうだったけど、たぶん周りも同じような考えで、私の成績は結局ず〜っと真ん中あたりをウロウロしていた。

 そこから10年。高校で出会った親友とは、今でも毎年旅行に行く仲だ。彼女のテスト勉強を3年間手伝わされた経験から、気づけば私は教職に進んでいた。たぶん、ここで彼女に出会わなければそうはなっていない。

 思えば桜が散ったところから、私の物語は始まった。あの頃の私みたいな、馴染んでいない制服を着たふわふわした顔の新入生が、今日からまたやって来る。
 今では違う花が大きく咲いている。

4/18/2023, 3:49:56 AM