saku

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夜の海
よるの海
依るの海
因るの海

月が昇って
月の光が波に反射して
その光も互いに反射し合って
キラキラ輝いている

海の中にいる時は
暗くて温かくて気持ちよかった
けど月の輝きに魅せられて
周りが止めるのも振り切って
全速力で泳いで海面に顔を出した
海の上はあまりにも広く、空気は軽く美しく澄んでいた
長い間うっとりした後
私は水中に揺れている自分の身体を見て
ガッカリ…
そこにあるのは、重くて柔らかくてみっちりと中身がつまった体
鱗に覆われた体
これではあの月が浮かんでいる所まで行けるはずがない
みんなが止めるのも無理はない
見なければこんなにガッカリすることはなかったのに

でもやっぱり行ってみたい
月のところに行ってみたい
もしこの尾を脱いで、代わりに羽根を背負ったなら
あの月の、いやその先までも行けるかな

すると急に風が吹いてきて、漣が立ち始めた
私は波に転がされ、岩につかまりやっと目を開けた
見渡す限りの海面に、雨が降り注いでいる
いや雨じゃない。
海面から何かが一斉に飛び出してるんだ

…魚たち!
小さな魚から大きな魚、サメ、イルカまでも
目を凝らすと貝やエビや小さな小さな生き物たちも、空に向かってどんどん飛び立ってゆく
一切の躊躇なく

ああやっぱりみんなそうなんだ
同じなんだ
何だか分からないけど行きたいよね
もう行けるんだ
考えたりガッカリしたり
そんなことするから行けなかったんだ

ただこの思いに身を委ねて
ただこの流れに乗って行けば
月が、空全体が
両手を広げて迎えてくれる





8/15/2023, 1:39:08 PM