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私はよく『泣き虫』と言われる。
自分でも自覚があるし、そう言われるのも仕方ないと思うし、直したいとも思っている。

初めて自覚したのは小学5年生の頃。委員会の仕事で、ルールを守れていない子に注意する役割をもっていた私は、クラスのカースト上位である女の子に注意をした。
その女の子は頑なに守れていない事を認めたくないようで、私に対し苦しい言い訳を繰り返し、大声で怒鳴った。
私が正しいのは明らかだ。絶対彼女が間違っていると断言出来た。それなのに、目の前にいる彼女の責めるような口調、態度、声量に押し負け、涙を流してしまった。


「何で泣くの。私が悪いみたいじゃん。やめてよ」


それ以来私は、その子が苦手になった。そして同時に、私は自分が悪かろうと悪くなかろうと、そう言う言い方をされると泣いてしまう程泣き虫で弱いのだという事を知った。

__そして私は今、カフェで幼馴染と向かい合わせで座っている。

私は、他愛の無い話をする幼馴染の顔を見る事が出来ない。昔のあの出来事がフラッシュバックし、怖くなってしまうから。
幼馴染は、私にメニューを見せてきた。「これ美味しそうじゃない?一緒に食べようよ」と言った。シェアが苦手なタイプなのに珍しい。と思った私は、思わず顔を上げた。


「あっ、やっと顔見てくれたね」


ガシッ、と顔を両手で挟まれる。しまった、罠に嵌ってしまった。幼馴染は私をじっと見つめると、やがて柔らかく微笑んで言った。


「貴方と真正面から向き合いたいの。だからここに座ったんだよ?…昔のまま、弱虫で良いの?」


幼馴染のその一言が、何故か私を鼓舞した。私は否定すると、自分の意志で幼馴染の顔を見つめた。ほんのり嬉しそうにするのを捉えた。

…何だ、案外、単純に克服出来るものなんだな。

私の中の過度な恐怖心が消え去った気がした。
私は幼馴染と、向かい合わせの席で、暫く紅茶を嗜むのだった。

8/25/2024, 3:56:20 PM