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“突然の別れ”


別れの言葉は突然だった。
突然も突然、ついさっきまで愛を確かめあっていたベッドの中で余韻に浸りながら近づけた唇が突然そう告げた。

「え?」
「だから、もうやめるって言ってるの」
「何を」
「この関係」

さっきまでの甘い空気はどこへやら。
いつものクールな姿にもどった彼女は僕の腕をあっさりと払いのけてさっさと帰り支度を始めていた。
その薄っぺらい僕のつけたキスマークだらけの白い背中をぼんやりと眺めるしかできなかった。
僕は一体何を間違ってしまったんだろう。
引き止めたいけど、そもそも僕なんかと彼女が付き合っていた方がおかしかったんだと思うと思うように体が動かない。

数ヶ月前、同じ学部のいわゆる"高嶺の花"と称される彼女が突然僕の隣の席に座ってきた時には目眩がするほど驚いた。
特別彼女に好意を寄せていたわけじゃないが、ずば抜けて容姿の良い彼女は目の保養だった。
そんな彼女がなぜ会話もしたことのない僕の隣に?とドギマギしたが、彼女が僕の隣に座った理由はしごく単純で、朴念仁の彼氏に嫉妬をさせたかったらしい。
その嫉妬をさせたい彼氏というのが、たまたま別の学部に在籍している僕の幼馴染で、たまたまその講義だけ被るからそれだけで僕が選ばれたのだ。
そこからなんとなく彼女とは話す様になって、幼馴染の愚痴なんかを聴いたり話したりする仲になり気づけば深い仲になってしまっていた。

頭が良くて運動もできてなんでもそつなくこなすうえに、やたらと立ち振る舞いがスマートに見えて(実際は他人との関わりを避けているだけの陰キャだと言うのに)異常にモテる幼馴染が自慢でもあり少しだけ妬ましかった。
だから、その彼女と夜を共にした翌日はあまりにも気分が良かった。生まれて初めて、あの完璧な幼馴染に勝てたんだ。
おそらく流れを知ってしまったのだろう幼馴染が気まずそうに僕を見る姿に気づかないふりをしながら心の中で何度ガッツポーズをしたかわからない。
彼女は幼馴染ではなく、僕を選んだんだ!

……と思ったのに。
別れは突然やってきて、僕はまだ温もりの残るベッドで僕には一体何が残ったのかを必死に考えていた。

5/19/2024, 4:06:50 PM