中宮雷火

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【ソレイユ】

3日間の家出から帰ってきたあの子の話です。

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家に帰って、まずお母さんに抱きしめられた。
泣きながら「ごめんね」って。
とても強く脆いハグだった。
私は少しびっくりしてしまったけど、なんだか私も泣きたくなった。
お母さんへの申し訳なさもあったと思う。
しかし、それ以上に「家に帰れたことへの安堵」が先行していたのだろう。
私もお母さんを抱きしめて涙を流した。

それからは一緒にご飯を食べて、家出生活のことを話したりした。
あまり多くのことは語らなかったけど、槇原さん夫婦のこととかおばあちゃんのことをたくさん話した記憶がある。
久しぶりにお母さんの笑顔を見た。
柔和な笑顔。
私はずっと見たかったんだ、
お母さんの笑顔を。
ただ楽しかった。
嬉しかった。

翌日以降は、私の進路について話し合う日が増えた。
というのも、終業式の日に担任との面談があるらしく、そこで私の進路が正式決定されるらしいのだ。
私が今通っている高校に残って、留年回避の為に補講を受けるか。
通信制高校へ転入するのか。
私は現在、不登校だ。
本来ならば後者の選択が正しいのだろう。
しかし、私は前者の選択がしたかった。
私は、私を諦めたくない。
勉強も部活も、教室での立ち回りも上手くいかなかった私だけど、私は逃げたくない。
私と周りの人達が許すのならば、
もう一度向き合いたい。
前回にお母さんと話し合った時は、意見がぶつかりあって上手くいかなかったけれど。
今ならちゃんと話せる、聴ける。
そう思った。
逃げたくない、と思った。

終業式の日。
担任との面談の日。
ここで、私のこれからが決まる。
お母さんとはたくさん話し合った。
やっぱり一筋縄ではいかなかったけど、
でも私達はもう決めてる。
「えー、ではこれからの進路について聞かせてもらってもよろしいですか?」
担任が言った。
お母さんが口を開こうとしたけど、私は止めた。
私が、自分の口で言うよ。
目で会話して、今度は私が口を開いた。
「私は、……この学校に残りたいです。
補講も受けます。」
これが、私達が出した結論。
お母さんが妥協してくれたわけでも、
私が強引に意見を押し付けたわけでもない。
これは、十分に話し合って決めたことだ。
「……そうですか。
では、これで決定ということでよろしいですか?」
「はい。」
私は横を向いた。
お母さんは微笑んでいた。
「大丈夫」と言ってくれたような気がした。
「では、夏休みは補講ということで進めていきますね」

そうして始まった夏休みは、学校での補講で
埋め尽くされることとなった。
約8カ月間の遅れを取り戻すのって、結構ハードだ。
改めて、自分の不登校生活が如何に長いものだったのか感じさせられた。
夏の茹だるような暑さ、太陽の下でダウンしそうな毎日だが、別に嫌ではない。
……嘘だ、本当はちょっと嫌だ。
でも、自分で決めた道だから仕方ない。
ここで立ち止まってなんかいられない。

そして、先生方の協力もあって私は留年を回避することができた。
あっという間に夏休みは終わり、9月1日が来た。

11/25/2024, 10:08:54 AM